研究概要 |
細胞・組織発現糖タンパク質の機能と構造を解析するために,2次元電気泳動法を用いた糖タンパク質のプロファイリング,及びLC/MSによる糖鎖プロファイリングと糖ペプチドマッピングからなるゲル内糖タンパク質の構造解析法の開発を行った. はじめに,モデル糖タンパク質として肝細胞増殖因子,トロンボモジュリン及び組織プラスミノーゲンアクチベータを用い,微量糖タンパク質構造解析法の開発を行った.まず,結合糖鎖の構造と分布を解析するために,グラファイトカーボンカラムを用いたキャピラリーLC/MS(CapLC/MS)による遊離糖鎖のプロファイリング法を開発した.タンパク質部分はトリプシン消化し,LC/MS/MSによるタンパク質同定に利用できることを確認した.また,同定された糖タンパク質を適当な酵素で断片化し,CapLC/MSを用いてペプチド・糖ペプチド混合物の中から糖ペプチドだけを描き出す糖ペプチドマッピング法を開発し,各糖鎖の結合位置を明らかにすることが可能となった. つぎに,2次元電気泳動法による細胞・組織発現糖タンパク質のプロファイリングと,糖鎖プロファイリングのゲル内糖タンパク質の糖鎖構造解析への応用を検討した.ラット脳からTritonX114による分画とPIPLC消化によりGPIアンカー型糖タンパク質画分を調製し,2次元電気泳動により,脳内GPIアンカー型糖タンパク質のプロファイルを作成した.泳動ゲル上のスポットを切り出し,ゲル内PNGaseF及びトリプシン消化を行い,N結合糖鎖とペプチド断片をそれぞれ回収した.ペプチド断片を用いてLC/MS/MSを行い,NCAM, LAMP, NTM, OBCAM, kilon,及びprionが同定された.このうち糖鎖構造未知のLAMP, NTM, OBCAM, kilonを含むスポットから抽出された糖鎖部分をCapGCC-LC/MSで分析し,脳特異的糖鎖BA-2,高マンノース型糖鎖,及びフコースやシアル酸を複数含む複合型糖鎖等であることが示唆された.本分析法は,今後,異なる細胞・組織(正常と病態等)間のプロファイルの比較による糖タンパク質の役割や機能の解明,及び差異の見られた糖タンパク質の構造の解析に役立つものと期待される.
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