研究概要 |
早期老化症状を呈するウェルナー症候群の原因遺伝子産物WRNと、その遺伝子産物WRNと相互作用するタンパク質群3種(WHIP : Werner Helicase Interacting Protein, UBC9,SUMO-1)は申請者が独自に見つけた。本研究費のサポートの元に、WHIPの発見を世界で初めて報告できた。13年度は生化学的手法、出芽酵母の分子遺伝学、トリDT40細胞を用いた体細胞遺伝学等を駆使して研究を進めた。その成果としては1)WRNとWHIPの相互作用にATP-Mgが必要であり、特にWHIPの持つWalker A, Bモチーフが重要であることを明らかにした(論文投稿準備中)。2)出芽酵母whip変異株の解析を進め、酵母WhipはRFCのようにRPA, PCNA, DNA polymerase δと遺伝学的に相互作用することを明らかにした(論文2報分投稿中)。3)トリDT40 WHIP破壊株は全く表現型を示さなかった。WRNと同様にRecQ familyに属するブルーム症候群原因遺伝子BLMのDT40遺伝子破壊株が利用可能だったので、DT40 BLM-WHIP二重遺伝子破壊株を作製した。その結果BLM破壊株の示す遅い増殖、メチルメタンスルホン酸に対する感受性、姉妹染色分体間の組換え(SCE)の亢進の全ての表現型がBLM-WHIP株でさらに悪化した。すなわち、高等動物細胞で少なくともBLMの非存在下という条件付きながら、WHIPがゲノム安定性維持に関わる証拠をはじめて得た(論文投稿準備中)。本来の目的であるWRN-WHIP株の作製も進行中であり、大きな成果が期待できる。
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