研究概要 |
本研究では,セラミドの細胞質型ホスホリパーゼA_2(cPLA_2)活性調節機構,およびそれらと病態との関わりを検索し,以下の成績を得た. 1)ウサギ血小板をCa^<2+>イオノフォアで刺激した時,および血小板破砕液にCa^<2+>を添加した時の,cPLA_2のCa^<2+>依存的な細胞膜への結合性を,膜画分中のcPLA_2の活性,およびイムノブロット法によるタンパク質量の増大から検索した.その結果,セラミドはこの結合を著明に促進させた. 2)ラット好塩基球系白血病細胞において,セラミドは,orthovanadate感受性のprotein tyrosine phosphataseを活性化し,cPLA_2を活性化するextracellular signal-regulated kinase 1/2を脱リン酸化して不活性化すること,また,ホスホリパーゼDの活性化を抑制してcPLA_2の基質となるホスファチジン酸の産生を低下させることを見出した.これらによりセラミドはcPLA_2活性を低下させる負の制御能を有することが示された. 3)マクロファージの酸化低密度リポタンパク質の貪食によるコレステロールエステル(CE)産生がcPLA_2活性に依存し,一方でセラミドのde novo合成が促進されることを見出した.また,細胞のスフィンゴミエリナーゼ処理でCE産生はさらに増大した.これらは,合成されたセラミドが,cPLA_2の活性化によるCE産生の増大を介してマクロファージの泡沫化を促進し,動脈硬化症の発症や進展に関わる可能性を示唆している. 4)メサンギウム細胞をtumor necrosis factor αで刺激すると,転写因子であるnuclear factor-κBの活性化とともに,cyclooxygenase-2と分泌型PLA_2の発現が生じたが,細胞をスフィンゴミエリナーゼで前処理するとさらに増大し,また,これら反応は活性酸素依存的であることが判明した.この刺激下でセラミドが産生されることから,このセラミドがプロスタグランジンの産生を促進して腎炎の発症に関わる可能性が示唆された.
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