研究概要 |
哺乳動物の卵細胞の周囲を取り巻く透明帯は、ZPA, ZPB, ZPCの3種の硫酸化糖タンパクより構成される。いずれも(1)抗原性の強さ、(2)組織特異性の高さ、(3)受精における重要性から、避妊ワクチンへの応用が研究されているが、天然の透明帯を用いる方法では、一定の純度の製品を安定して供給することが容易ではない。また、多くのエピトープを含む抗原は副作用の危険も高い。本研究では、ヒト透明帯タンパクのひとつ(hZPA)を遺伝子組換法で大量に生産し、天然の透明帯と同様な抗原活性を保持しているか、また、対応する抗体が避妊ワクチンとしての効果を示すかどうかを検討した。本研究期間には、次の4つの項目について実験を行い、結果を得た。 1,ヒト透明帯タンパクZPAは707アミノ酸から成るが、」そのアミノ末端より206アミノ酸をコードするDNAを用いて発現ベクターを構築した。大腸菌(BL21)を形質転換し、目的の組換体hZPAタンパク(r-hZPA)を合成することに成功した。封入体として生産されたr-hZPAを8M尿素で溶解し、His-tagを利用し、ニッケルカラムで精製した。 2,組換体タンパク(r-hZPA)が天然の抗原性を保持していることをモノクローナル抗体を用いて確認した。また、生理的機能を保持したタンパクであることを精子への結合性を調べることにより確認した。 3,r-hZPAをウサギに免疫して作成した抗血清は、ヒトのみならずブタ、ウサギの透明帯とも交差反応した。また、in vitro におけるヒト精子の透明帯への結合を阻害した。 4,non-human primate(Macaca Radiata)に免疫して作成した抗血清もウサギ抗血清と同様、in vitroにおけるヒト受精を阻害することを確認した。 以上より、本研究で合成に成功したr-hZPAは、ヒト、ペット、野生動物のpopulation controlに、避妊ワクチンとして応用できるペプチドであることが明らかとなった。
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