研究課題/領域番号 |
12672171
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境系薬学
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片岡 洋行 岡山大学, 薬学部, 助教授 (80127555)
|
研究分担者 |
阪本 博 岡山市水道局, 水質試験所, 所長
成松 鎮雄 岡山大学, 薬学部, 教授 (20113037)
|
研究期間 (年度) |
2000 – 2001
|
研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
|
配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2001年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
キーワード | ヘテロサイクリックアミン / 蛋白質付加体 / バイオマーカー / メダカ / 発がん性 / 窒素選択検出ガスクロマトグラフィー / 河川水 / 疫学的解析 |
研究概要 |
強力な変異原性や発癌性を有するヘテロサイクリックアミン類はこれまで食品由来と考えられてきたが、大気や河川水など一般環境中にもその存在が認められるようになり、その分布や動態及び生体影響を把握することが衛生化学的観点から非常に重要な課題となっている。しかし、ヒトや生物がどの程度ヘテロサイクリックアミンに曝露されているのか、またそれが安全なのかどうかについては未解明のままである。そこで、本研究では、環境中生物やヒトにおけるヘテロサイクリックアミン汚染の実態を把握するために、生活環境中、特に飲料水の供給源となる河川水や調理食品中のヘテロサイクリックアミン含量を測定し、疫学的手法による一日推定摂取量の解析、さらにヘテロサイクリックアミン-蛋白質付加体をバイオマーカーとした生体曝露評価法を検討した。 ブルーレーヨン抽出、誘導体化GC-NPD分析により、河川水や通常の調理法で焼いた魚及び肉中にIQ、Trp-P-1、MeIQx、PhIPなどが検出確認された。特に焼き魚中にはPhIPが高濃度に検出され、身の部分よりも皮の部分に高濃度に含まれていた。さらに、日本の各地域における肉及び魚の摂取量調査の結果から、日本人のヘテロサイクリックアミンの一日推定摂取量を算出した。日本人はPhIPを最も多く摂取しており、本土では沖縄に比べてヘテロサイクリックアミン摂取量が多く、主として魚からヘテロサイクリックアミンを摂取していることがわかった。これらの結果は、食習慣と発癌リスクとの関連性を評価するための有効な指標になるものと考えられる。 次に、直接曝露されたヘテロサイクリックアミン量を求める方法として、ヘテロサイクリックアミン-蛋白質付加体に注目した。メダカをヘテロサイクリックアミン水溶液中で一定期間飼育し、蛋白質分画を抽出後、酸加水分解により遊離したアミンをGC-NPD分析して蛋白質付加体量を測定する方法を確立した。本法を用いてヘテロサイクリックアミン曝露とその蛋白質付加体生成量との相関性を検討したところ、曝露濃度や曝露期間に応じて付加体生成量が増加したことから、継続的に摂取すると体内に蓄積し、曝露の指標として有効であることが示唆された。そこで、ラットを用いて血中蛋白質付加体の解析を行ったところ、高用量ヘテロサイクリックアミンの単回投与では付加体生成が確認できたが、短期間で消失することがわかった。また、低用量反復投与では、血中蛋白質付加体の蓄積は認められなかった。また、臓器分布を調べたところ、付加体は肝臓にのみ検出された。これらの結果から、魚類では水中にヘテロサイクリックアミンが常時存在すれば継続的に曝露され、蛋白質付加体として蓄積されるが、主として食事を通してヘテロサイクリックアミンを摂取するヒトを含む動物では、蓄積されにくく、血中にはごくわずかしか存在しないものと推察される。今後、血中蛋白質付加体をヒトにおけるヘテロサイクリックアミン曝露の指標とするためには、酸加水分解により元のアミンとなるスルフィナミド以外の付加体の測定方法や、より高感度な検出法及びサンプル濃縮法などの検討が必要であると考えられる。
|