研究概要 |
環境由来の化学物質の生体内におけるステロイドホルモン産生に及ぼす影響を解明する目的で、ヒト副腎皮質由来の培養細胞であるH295Rをヒトのステロイド産生細胞のモデルとして用い、そのコルチゾール産生に及ぼす影響をin vitroで検討した。このアッセイ法を用い、環境中に残存すると考えられる代表的な農薬、高分子を素材とした生活関連製品から溶出が疑われており、内分泌かく乱化学物質としてもリストアップされているスチレンモノマー、ダイマー、トリマー、フタル酸エステル、アルキルフェノール類、植物エストロゲン及び有機スズ化合物の影響を検討した結果した。その結果、DDTとその代謝物、フタル酸エステルであるフタル酸ジシクロヘキシル、アルキルフェノールであるオクチルフェノール及びノニルフェノール等がH295R細胞のコルチゾール産生を抑制することを明らかにした。食餌として多量に摂取する可能性がある植物エストロゲンであるフラボノイドの影響を検討した結果、6-ヒドロキシフラボンやダイゼイン及びゲニステインをはじめとするフラボンやイソフラボンが同様にH295R細胞の産生するコルチゾール産生を抑制することを明らかにした。有機スズ化合物であるトリブチルスズオキシド、トリブチルスズ、ジブチルスズ及びトリフェニルスズもH295R細胞の産生するコルチゾール産生を有意に抑制した。コルチゾール産生を抑制した化学物質についてその作用機序を検討するために、コルチゾール生合成を触媒する酵素であるC_<20,22->リアーゼ(P450scc)、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプII(3β-HSD II)、17α-ヒドロキシラーゼ/C_<17,20>-リアーゼ(P450c17)、21-ヒドロキシラーゼ(P450c21)及び11β-ヒドロキシラーゼ(P45011β)に対する作用を検討した。
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