研究概要 |
S100Cは我々が新しく精製したS100タンパク質ファミリーで平滑筋に多く存在する。我々はS100Cが平滑筋においてカルシウム存在下にアクチン活性化ミオシンMgATPase活性を濃度依存性に阻害することを明らかにした。その作用はカルモデュリンおよびS100L, S100ao, S100bなどのカルシウム結合蛋白質には認められなかったことからS100Cのアクチン活性化ミオシンMgATPase阻害作用はカルシウム結合蛋白質では特異的なものであると考えられた。さらに、平滑筋に多量存在するアクチン結合蛋白質、カルポニンによるアクチン活性化ミオシンMgATPase阻害作用に対してS100CカルモデュリンおよびS100L, S100ao, S100bによる回復作用を検討した。その結果、カルモデュリンおよびS100ao, S100bは濃度依存性に回復したがS100Lは効果が認められず、S100Cは相加的に阻害を増加させた。これらのことからS100Cはカルポニンとは異なるアクチン結合部位を持つことが推測された。S100Cはアクチンとカルシウム依存性に1対6-7の割合で結合しその親和性は1x10-6Mであった。さらに、S100Cのアクチン結合部位をゼロレングスのクロスリンカー、1-ethyl-3-[3-(dimethylamino)propyl] carbodiimide (EDC)を用いて検討した。クロスリンクの後トリプシン分解し、その分解産物のシーケンスによりアクチンのLys-191とS100CのGlu-44で結合していることが明らかになった。以上の結果からS100Cは平滑筋収縮機構においてアクチン活性化ミオシンMgATPaseの調節を介して、アクチン側からの調節を司っていることが示唆された。
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