研究概要 |
薬物療法の最適化を製剤的に支援する薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム,DDS)の開発に際しては,各種DDS機能を特徴付け,それらを科学的に保証する評価法の確立が必要である。本研究課題では,局所作用型DDS医薬品の合理的製剤設計を支援する新規製剤評価法として,薬動学的局所薬物動態の評価および薬力学的局所利用率の評価に関する評価系を生物薬剤学的手法と応用薬理学的手法を組み合わせて確立するための基礎的知見を得ることを試みた。 本研究により下記の新たな知見が得られた。 1 薬動学的局所薬物動態評価へのマイクロダイアリシス(MD)の応用 (1)局所遊離形薬物濃度を連続的にモニタするMD法の問題点である低回収率に起因する時間分解能の向上にリポ・マイクロダイアリシス法(Lipo-MD法)が有用であることを明らかにした。さらに、経皮薬物吸収実験系においてLipo-MD法をZero-Net-Flux(ZNF)法に応用したLipo-ZNF法を考案した。本法は,高い信頼性で皮膚内の遊離形薬物濃度の推定を可能にした。 (2)MD法をClosed Loop法に組み込んだIntra-Loop-MD法を考案し、大腸からの薬物吸収動態評価を検討した。本法は,同一個体での連続的な動態評価を可能とし,吸収動態パラメータの推定に要する実験動物個体数の大幅な削減も可能であった。本法は個体間変動の大きい潰瘍性大腸炎モデルラットの大腸吸収動態評価にも有用であった。 2 薬効動態データに基づく薬力学的局所利用率の評価 局所作用型DDS医薬品であるリポPGE1製剤のラット新生仔動脈管拡張作用を速度論的に解析し,本剤が局所作用の面で優れた製剤特性を有することを明らかにした。同時に、薬物濃度推移データの取得不能な医薬品における薬効動態の速度論的解析による局所利用率評価の薬物治療学的な意義が明らかとなった。
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