研究概要 |
Opioidμ受容体は生化学的及び薬理学的見地から、少なくとも2つ以上のsubtypeの存在が推測されている。これまでμ1受容体拮抗薬であるnanoxonazinc及びμ1及びμ2受容体拮抗薬であるβ-funaltrexamineを用いてμ受容体のsubtypeを決定する方法が用いられている。これまでμ2受容体の特異的拮抗薬は発見されていなかったが、著者の研究によってD-Pro^2-endomorphin-1が特異的な拮抗薬であることが見出された。μ2 agonistであるDAMGO及びendomorphin-1の拮抗作用は、D-Pro^2-endomorphinの併用により拮抗することが認められた。さらにD-Pro^2-endomorphin-2はDAMGO及びendomorphin-1の抗侵害作用には拮抗しなかった(Br.J.Pharmacol.137,1143-1146)。これまでの著者の研究から、TAPA (Tyr-D-Arg-Phe-β-Ala)はnaloxonazineに対して高感受性であり、μ1受容体agonistであることが認められた(Eur.J.Pharmacol.,486,19-24(2004))。TAPAによって引き起こされる抗侵害作用はD-Pro^2-endomorphin-2によって拮抗されたことから、D-Pro^2-endomorphin-1はμ2受容体及びD-Pro^2-endomorphin-1はμ2受容体及びD-Pro^2-endomorphin-2はμ1受容体拮抗薬であることが示されたのである。これらμ受容体のsubtypeの分類はμ受容体の種々の作用を分類できるのみならず、副作用のない強力な鎮痛作用を検討する上で重要な指針となるであろう。
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