研究概要 |
血小板-血管内皮細胞クロストークにおけるリゾリン脂質の関与を探るため,スフィンゴシン1-リン酸(sphingosine 1-phosphate ; Sph-1-P)とリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid ; LPA)の,血小板における産生様式ならびに臍帯静脈血管内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell ; HUVEC)に対する効果を比較検討した.その結果,活性化血小板由来リゾリン脂質でありかつ内皮細胞の強力なアゴニストであるSph-1-Pの重要性が明らかとなり,この結果をBlood誌に公表した. Sph-1-PはHUVECに対して強力な遊走促進因子として作用するが,これをボイデン・チェンバー法と金コロイドphagokineticアッセイ法にて確認し,その際のSph-1-P刺激情報伝達経路を解析した.HUVECにおいては,Sph-1-P受容体としてEndothelial Differentiation Gene(EDG)-1とEDG-3が主に発現している.前者は,Giを介してRacの活性化さらには葉状仮足の形成をもたらし,この際,Casが重要な関与を果たす.一方,後者(EDG-3)は,G13を介してRhoを活性化し,焦点接着の形成やストレスファイバーの形成に繋がる.この両者の相乗作用がSph-1-PによるHUVEC遊走反応に重要であることを明らかにし,その結果をJ.Biol.Chem.誌に公表した. 一方,Sph-1-P定量法の改良も継続して行っている.Sph-1-Pをアルカリ下・酸性下の二段階で抽出した後o-フタルアルデヒド誘導体を生成させ,この産物をHPLCにより分離して蛍光モニターする方法が有望であるという結果を得ており,実用化を目指して検討を重ねている.
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