研究概要 |
新生児血中に新規ステロイドとして16-デヒドロプレグネノロンサルフェート(16-DHPS)を同定・確認し、さらに本ステロイドはプレグネノロンサルフェート(PregS)から16-ヒドロキシプレグネノロンサルフェート(16-OH-PregS)を経てPregS→16-OH-PregS→16-DHPSの経路で生合成されることを明らかとしている.この代謝経路が既知の代謝経路であるPregS→17-OH-PregS→DHEAS→16-OH-DHEASの経路の流れを調節しているかについて検索した.本研究を行うためにはまず,各ステロイドの測定系の開発が必須である.平成12年度までに血清検体からの上記各ステロイドの抽出法について検討を行った後,GC/MS法によるPregS,16-OH-PregS,16-DHPS,17-OH-PregS, DHEASおよび16-OH-DHEASの測定法を確立した.さらに,非抱合型ステロイドである16-DHPを測定する為,その酵素免疫測定法(EIA)の開発を行った(Biol.Pharm.Bull.24,867(2001)).平成13年度はこれら測定法を用い母体血液中の各ステロイドを測定し,母体一胎盤側での代謝調節について検索した.上記二つの代謝経路を調節するキーとなるステップはPreg(S)の17位水酸化反応と16位水酸化反応と考えられる.そこで妊娠中(検体を3群に分類:第1三半期から第3三半期)および出産後11ヶ月目までの各時期における17位と16位水酸化活性を生成物/基質の比,すなわち17-OH-Preg(S)/Preg(S)比と16-OH-Preg(S)/Preg(S)比を求め調べた.その結果,妊娠に伴って硫酸抱合型および非抱合型Pregの17位および16位水酸化活性はともに非妊娠時よりも非常に低下した.その後,妊娠の経過に伴いPregの17位水酸化活性はさらに低下傾向を示した.これに反して16位水酸化活性は妊娠末期に向かって活性の上昇が認められ17位水酸化活性とは逆相関が認められた.また,PregSの16位と17位水酸化活性も有意差は得られなかったが同様の傾向が見られた.なお,17-OH-Preg(S)および16-OH-Preg(S)以降の各ステップでの生成物/基質の比を検索したが,代謝の流れを動かすと考えられる結果は得られなかった.今回の結果はPreg(S)の16位水酸化がPreg(S)から16-OH-DHEA(S)への流れを調節している可能性を示唆するものである.
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