研究概要 |
日本全国からのヘモグロビン異常症の疑われる血液検体や輸血依存性の重篤な貧血症のミャンマー人からの血液についてタンパク化学および分子生物学的手技を用いて迅速診断法の開発を目的に解析を試みた. Hb分析からβサラセミア症が疑われた患者に対して,日本人に頻発する5種のβサラセミア変異体(-31CapA→G, CD41/42TTCTTT→TT, CD90GAG→TAG, IVS II-1G→A, IVSII654C→T)やミャンマー人に予想された5種の変異体(CD17A→T, IVS I-1G→T, IVS I-5G→C, CD41/42TTCTT→TT, IVSII-654C→T)の検出はARMS(Amplification Refractory Mutation System)法が有効な方法と考えられ,およそ70%の患者に検出された.しかし,スクリーニング法とするには条件設定が困難であり,個々の変異体検出条件の設定が必要であった.未知あるいは稀な変異体の検出にはPCR/シーケンシング法が欠かせない.ミャンマー人の主要な異常HbはHb Eであり,PCR/Mnl I消化法で容易に検出される.今回の検査でHb SとHb Monroeの保因者が検出された.日本ではHb Riyadh, Hb Takamatsu(β鎖異常Hb)やHb J-Cape Town, Hb Ube-2(α鎖異常Hb)は主要な異常Hbであるが,多種多様な異常Hbの検出される我が国ではPCR/シーケンシング法によらねばならなかった. 一方,αサラセミアは両国とも-α4.2,--MED,--Fil,--Thaiの様な変異体は検出されず,ほとんどが-α3.7,--SEA変異体であり,multiplex PCR-アガロースゲル電気泳動法で検出可能と考えられた.
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