研究概要 |
モノクローナル抗体FU-MK-1が認識する腫瘍関連抗原MK-1は,消化器癌を始めとするほとんどの癌腫に存在する新しい抗原である.われわれは,この抗原が分子量約4万の膜貫通型糖タンパク質であり,既存のいずれの抗原と違うことも証明してきた.本研究は,MK-1の癌の血清診断における意義とこの抗原を分子標的にした癌の免疫療法の意義を検討したものである. 平成12年度は,MK-1の癌の血清診断における意義を検討した.まず,組替えMK-1タンパクをカイコ幼虫に発現させて精製した.精製MK-1でマウスを免疫してモノクローナル抗体を作製し,2種のクローンを選んでサンドイッチEIAを確立した.正常人と癌患者血清中のMK-1を定量した結果,正常人30例ではすべて検出感度(2ng/ml)未満であった。癌患者では236例中24例が陽性(2mg/ml以上)で,最高例は75mg/mlであった.以上のことは,MK-1は他の腫瘍マーカーと違って血中には遊離しにくいが,MK-1陽性でほかのマーカーが陰性の場合,治療後の経過観察に利用できることを示している. 平成13年度は,腫瘍関連抗原MK-1を標的とするT細胞免疫療法を検討した.まず,FU-MK-1抗体の単鎖抗体scFvとスーパー抗原の一つで広くT細胞を活性化するstaphylococcal enterotoxin A(SEA)の変異体を遺伝子レベルで融合して大腸菌にて発現させ融合タンパクを得た.融合タンパクは,in vitroおよびSCIDマウスを利用したin vivoにおいて,T-LAK細胞との組合わせによりMK-1発現癌細胞に対して非常に強い細胞傷害活性を示した.以上の結果は,腫瘍関連抗原MK-1が癌の免疫療法の有用な標的になりうることを示している.
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