研究概要 |
本研究の目的は,看護分野の国際協力を経験した看護職が,帰国後にどの程度その経験を発展させる環境にあったかを検討するとともに,経験者が自らの国際協力経験をどのように考えて看護に反映させているかを明らかにすることによって,活動経験の還元状況を把握すると同時に,そこにおける問題点や課題について検討することである。 調査は2段階に分け,平成12年度には第1次調査として1966年の青年海外協力隊看護職隊員が派遣されて以降に派遣されて帰国した991名に対して郵送法による質問紙調査を実施し,転居先不明を除く902名中397名から回答を得た(回収率44%)。その結果,協力隊に参加するために75.8%は退職していたが,60.4%は帰国後半年以内に再就職していた。83.1%は帰国当初に再度国際協力活動に参加する意思があったが,家族や仕事の状況,自分自身の能力等を参加するための障害と考えていた。また任国での看護活動にあたって看護職の資質や気質に驚いたり,感心しながら,看護の基本的知識・技術や運営管理等を改善しようと試みてきたこと,現地の看護のなかで自分に取り入れようと考えた点もあり,国際協力の経験が自分の看護の開発に役立っていることが判明した。 これらの第1次調査結果の分析を進めながら,平成13年度に第2次調査を実施した。対象は第1次調査回答者の中から協力の得られた102名で,半構成的面接調査を実施し、同意を得て面接内容をテープに録音した。テープから逐語録を作成し,内容をコード化した後に類似のコードをサブカテゴリーに分類し,さらに類似のサブカテゴリーをカテゴリーとして分類した。これらを任国と日本との看護の相違点および共通点,国際協力の経験前後の看護観の変化,経験の活用状況,経験の活用の可能性などについてまとめた。その結果,2,902のコードが抽出され,半数近くは看護上の相違点についてであった。国際協力の経験は具体的な知識や技術よりも,考え方に活かされていることが明らかになった。
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