研究分担者 |
平岡 敦子 広島県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助手 (70300423)
片山 勢津子 京都女子大学, 短期大学部, 講師 (60164307)
加藤 力 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (40111992)
國方 一憲 國方一憲建築事務所, 所長
下見 千恵 広島県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助手 (80300424)
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研究概要 |
本研究の目的は,病産院における母と子の寝床空間機能を取り上げ母と子の相互関係の心理・情緒関係性について母性看護学と感性工学的視点からの研究である。 そこで,12年度の研究は,入院中の母と子の寝床環境の実態と環境に対する評価,および情緒的関係性について,寝床環境の評価尺度を作成し看護学生を被験者に調査し要求水準を抽出した。さらに予備実験でビデオカメラにて母子の相互作用の行動を録画し2次元解析しその特性を解析した。 13年度は,次のような知見を得た。 1)母子のベッド配置関係を実験し,母子相互の情緒的関係性を抽出した。 「新生児に対する愛情」や「安心感」が最も高くなる新生児用ベッドは,次の特徴をもっていた。 (1)母のベッドと同じ高さで,なおかつ(2)母の頭元に配置されたベッドであった。 2)母子のベッド配置と母親の行動を3次元実験にてその特性を抽出した。 実験の結果,新生児の衣服の着脱などの保育行動を行うためには,既成の新生児ベッドの広さでは限界があった。 3)母子同室体制の病産院の看護職(看護師・助産師)を対象にアンケート調査し,母と子の寝床空間環境を評価し,要望を抽出した。その結果,現状の新生児ベッドの配置が理想とは異なると回答した看護職者は7割以上を占めた。その最も大きな要因として,「病室のスペースが狭い」ことが指摘された。 これらの成果で,母と子の寝床空間については,母子間距離には安心感,一体感,不安感など一定の距離特性が存在し,「児と接触のしやすさ」「病室形態」「新生児ベッドの配置・高さ・広さ」も,母子相互の情緒的関係性に影響する因子であることを見いだした。 現行の医療法で規定されている病床面積で、母児同室にすることは手狭であること、そのため母のウエスト・足下周辺に児のベッドを配置している実態が明らかとなり,児と触れ合うというマザーリングのしやすさをコンセプトにした産科の病床面積の改善が必要であることが導き出された。加えて、既製の児のベッドの高さではマザーリング面、広さという点では作業面も改良が必要であることが示唆された。 医療法による一般病床では新生児ベッドを加味した病床面積では積算されてなく、成人ベッドのみ収容面積で規定され,新生児ベッドを配置する空間域は明記がない。母児の相互作用という情緒面から「母児同室」が望ましいという本研究成果を踏まえて、病床面積,病室形態,病床空間域等について追究し,新たな産科病室の設計計画を提言すべき、今後の研究課題となった。
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