研究概要 |
調査対象は,A大学病院で妊娠中に胎児異常の告知を受け病気または障害をもった子どもを出産した母親10名である。調査内容は,一般的な感情体験,病的悲嘆反応、心理テスト(STAI, SDS)である。調査方法は,質問紙調査を面接である。調査時期は,一般的な感情体験,心理テスト(STAI, SDS)は、告知後,出産直後,出産後6ヶ月,出産後1年、出産後1年半、出産後2年、出産後2年半、出産後3年である。調査期間は,1998年6月から2002年7月である。 結果は、次の通りである、一般的な感情体験および病的悲嘆反応は、告知後に最も多くみられたが、出産後1年ではみられなくなった。告知後に最もよくみられた項目は,「不安な気持ち」や「児の空想」であった。子どもの有無と一般的感情体験得点の検討では、いずれの時期も子どもがいない人の方が一般的感情体験得点は高かった。病的悲嘆反応得点では、子どもがいる人は,告知後から出産後1年まで,ほぼ一直線であった。心理テストでは、STAIの状態不安,特性不安得点,SDS得点ともに告知後が最も高く,出産後1年から1年半が最も低かった。 正常妊娠分娩経過を辿った母親の育児期の精神状態の調査結果は、以下のようであった。STAI・SDSは、子どもの不快状況や睡眠に関すること,子どもとの関係や接し方に関することが大きく関係していた。しかし,情報が多くて混乱することについては,最も多くの母親が悩んでいたが,STAI・SDSに影響してないことが明らかとなった。家事および育児役割に対する母親の理想と現実との差および父親の認識との差(性役割の差得点)では,母親の家事,育児比重が大きいほどSTAI, SDSが高いことが示された。
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