【研究目的】医療機関において認知障害のある高齢患者の意思に対する看護者の認識過程に注目し、高齢患者に対する理解と対応への影響を明らかにすることである。【研究方法】認知障害のある65歳以上の高齢患者6名と'高齢患者に関わった看護者17名を対象に、帰納的アプローチによる記述的デザインを用いて、高齢患者の日常生活援助や医療処置への参加観察と看護者への面接によりデータを収集した。【研究の結果】1.対象の属性:対象は都内の総合病院2病棟に入院していた平均年齢75.5歳の認知障害のある高齢患者6名(女性4名、男性2名)と、これらの患者に関わった平均年齢26.0歳の看護者17名であった。2.認知障害のある高齢患者の意思への看護者の認識過程:日常生活援助における認知障害のある高齢者と看護者との相互作用において、高齢患者の意思への看護者の認識過程は、患者が主張する意思と看護者が患者に対して抱く日常生活のケア、治療処置への期待との問で折り合いをっけていく【意思との折り合い】の過程であった。この過程において、看護者は患者の言動の<変化に注目>して、その言動が何を意味しているのか聞き込むことによって言動から<意思を読み取り>、また患者自身やスタッフから新たな情報を得て<意思の確認>を行いながら、患者の<意思に対する決定>に至ることで、患者の《意思の確かめ》を行っていた。高齢患者の意思と看護者の期待との狭間の中で決定に至る過程には、看護者の指示に対する患者の拒否の意思を見極めてケアを決定していく〔指示に対する意思の見極め〕、看護者が実施するケアに対しての患者の不快の意思を見積もりながらケアを決定していく〔不快の見積もり〕、管理面、安全面で問題のある患者の意思をどこまで受け入れていくか見定めて決定していく〔意思受け入れの見定め〕の3つの局面があった。この局面には、患者の意思を受け入れる、患者の意思と妥協する、患者の意思を抑制するの3つのアプローチがあった。
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