研究概要 |
高齢者は成人に比べ,環境変化の影響をうけやすい.そのためにここ数年来の熱波による暑熱障害が高齢者に多発しており,それへの対応は緊急の課題である.そこで本研究では,高齢者の暑熱障害予防のための基礎的な資料を得ることを目的に,暑熱順化によって高齢者での水分出納および飲水行動の基礎となる口渇感・塩味の感受性がどのように変化するのかを若年者を対照群として比較検討する.研究期間は2年である.まず初年度(平成12年)は,対象者に対して暑熱順化実験の前後に水分出納や飲水行動の調査を実施し,その実態を把握した.次年度(平成13年)は初年度の結果に基づき,暑熱順化による高齢者の水分出納や飲水行動に影響を及ぼす因子を抽出し,暑熱障害予防のための具体的な飲水等,具体的な生活援助の方法を検討した. 暑熱順化実験前後の水分代謝や飲水行動についてを,高齢者9名を対象者として,若年者5名を対照群に調査した結果,両者共に短期間の暑熱順化により蒸泄量が増加し,それに見合った補水がなされていることが確認された.しかし,順化による尿量の減少や蒸泄量の増加は,高齢者では若年者に比べて少なく,加齢による体液量調節機能や発汗機能の低下が示唆された.従って,高齢者の暑熱障害予防には積極的な飲水補給だけでなく,外出時工夫や適時の冷房使用,飲水時間の工夫など生活上の配慮が必要であり,特にこれらの工夫を高齢者自身が自覚できるような支援が大切であると考える.
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