研究概要 |
総合的技術史の構築を目的として、生産技術の歴史的展開過程に関する技術論的視点からの構造分析をおこなった。具体的には、同じ時代に新しい技術システムと古い技術システムが共存する理由を説明する理論的仮説である「技術の好適機能範囲」論という視点からトヨタがカンバン方式のデジタル化をはじめとした現代的オートメーション化に消極的であった理由の技術論的解明、IT革命と一般に呼ばれている現象の技術的性格とその段階的発展および将来的な発展方向に関する技術論的分析、「動力」「伝達」「作業」「制御」という4つの技術構成要素の歴史的分化と再結合=相互連関という視点から技術の歴史的発達構造がどのように理解できるのかに関する様々な先行研究の批判的検討、パソコン関連企業を中心とした事例研究に基づく技術構成要素論的視点からの現代技術の歴史的形成構造の解明などの研究をおこなった。 そうした研究の成果として、佐野正博(2000)「「IT」革命とはどういう「革命」か」においては、IT革命と一般に呼ばれている現象の技術的性格とその段階的発展、および、将来的な発展方向に関する技術論的解明をおこなった。佐野正博「パソコン市場形成期におけるIBMの技術戦略」『経営論集』明治大学経営学研究所,第50巻第3号,2003年,pp.79-108においては、IBMがパソコン市場へ1981年に新規参入する際にパーソナル・コンピュータという製品をどのような技術戦略のもとに開発したのかを分析し、パソコン市場形成期におけるIBMの技術戦略がMITS社のAltair8800や、Apple社のApple IIといった製品とほぼ同じ技術的構成の上に構築されたものであることを示した。
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