研究概要 |
本研究の主たる目的は,高齢者のQOLの特徴とその関連要因を明らかにすることであった.先ず,高齢者のQOLを捉えるために生活満足度,モラール,および抑うつの3つの構成概念を取上げ,それらの評価尺度の有効性を検討した.次いでQOLの各構成概念に関連する要因を性別,年代別等,種々の観点から詳細に検討した. 既存のQOL評価尺度の妥当性および信頼性を検討し,尺度の有効性について言及した.その中で,新たな生活満足度尺度を作成し,提案した. 生活満足度の特徴とその関連要因について検討した.主な結果は次のとおりである.後期女性高齢者の満足度は男性よりも低かった.体力および健康度自己評価,運動実施状況,ボランティア活動,規則正しい食事および親友の多さは,身体的健康に関する満足度および日頃の過ごし方に関する満足度と関連すると考えられた. モラールの特徴とその関連要因について,様々な観点から検討した.主な結果は次のとおりである.後期高齢者よりも前期女性高齢者のモラールが高かった.経済状態に対する満足度,女性における配偶者の存在,体力および健康度自己評価,規則正しい食事,親友の数が高齢者のモラールと関連した. 抑うつに関する検討結果は次のとおりである.後期女性高齢者の抑うつは前期女性高齢者や男性よりも高かった.男性高齢者および後期女性高齢者において,非就労者は就労者よりも抑うつが高かった.経済状態に対する満足度が高い者ほど抑うつが低く,その傾向は後期高齢者よりも前期高齢者において顕著であった.体力および健康度自己評価,運動の実践,ボランティア活動および親友の数は,性および年代に関わらず抑うつと関連が認められた. 以上,在宅高齢者のQOLは,その背景に多様な生活状況要因の複合的影響を受けて成立しており,QOLを高めるためには性および年代を考慮した生活状況の質的改善が望まれる.
|