研究概要 |
本研究は,泳ぐ動作の認識の度合いとパフォーマンスが一体どのようにマッチングしていくのか否かを縦断的に追跡・検証することである. 12年度は、基本的な動作に焦点を当て,水泳熟練者のけのび動作の到達距離と投射角度,接地位置,重心移動速度,力発揮の関係からけのびのパフォーマンスを決定づける要因を明らかにした.その結果,到達距離と接地位置は,R=0.57(P<0.05)と有意な相関が認められ,熟練度が高まるとより深いところで壁を蹴ることが推察された.熟練度が高まるとより深いところで壁を蹴ることが推察された.また,リリース時から0.5秒後の重心移動速度と到達距離はR=0.85(P<0.05)と有意な相関が認められ,壁を蹴った後のストリームライン姿勢(前面抵抗の最も少ない姿勢)如何によって到達距離が決定づけられることが明らかになった. 13年度は,中等度熟練者を加えたそれぞれ3者間の関係において,力発揮とその動作がどのようになるのかを明らかにすることを本研究の目的とした.その結果,初心者や中等度熟練者が瞬間的な力発揮によってけのびの到達距離が影響されるのに対して,熟練泳者はリリース後の力発揮のパターン,力積,ストリームライン姿勢の取り方などによって変化することが明らかになった. 14年度は動作と認識の変化を縦断的に検討するため,大学生男女の初心者を抽出し,動作と認識アンケート,泳フォーム,水中での壁を蹴る力を指導前後に測定,解析し,その変容を検討した.その結果,力積とけのびの到達距離との関係は,初心者から中級者,上級者へと技能が上達するに従って統計的に有意な相関がみられ,習熟の度合いによってこの関係性が幾分変化していく様相を捉えることができた.また,カベを蹴る力の大きさが必ずしもけのびの到達距離に反映されるわけではなく,むしろ少ない力で,できるだけ抵抗のない姿勢を作り,適切な初速(秒速2.5m/s付近)を保って,徐々に蹴り出すことが「けのび」のコツであることが示唆された.
|