研究概要 |
糖質・脂質代謝と体脂肪分布に及ぼす骨格筋トリグリセリドの影響について検討するため,ラットを用いた実験を行なった.まず,骨格筋への脂肪蓄積がインスリン作用を弱め骨格筋あるいは全身の糖・脂質代謝を妨げることが示唆されているので,実験1において,自発走トレーニング(VT)が骨格筋に蓄積される筋トリグリセリドの濃度を低下させることができるか,および筋トリグリセリド濃度の変化が骨格筋あるいは全身の代謝特性の変化と関連するかについて検討した.実験結果は4週間のVTにより筋トリグリセリド濃度が有意に低下することを示した.さらに,トレーニング群では,筋トリグリセリド濃度の低下に加えて,内臓脂肪重量,血清トリグリセリドおよび血清グルコース濃度の有意な低下が認められた.なお,トレーニング群とコントロール群の間にクエン酸合成酵素活性の有意な差異は見られなかった.実験2では,タイプ2糖尿病のモデル動物であるOLETFラットを用い,骨格筋のトリグリセリド蓄積が多いOLETFラットはコントロールのLETOラットよりも骨格筋の毛細血管密度が低いとの仮説を検証するための実験を行なったが,実験結果は仮説を支持しなかった.実験3では,レジスタンストレーニング(RT)が骨格筋の代謝能力を改善し,さらに内臓と骨格筋内へのトリグリセリド蓄積を抑制することができるかどうかについて検討を行った.加えて,RTが代謝に影響を及ぼす脂肪細胞由来サイトカインであるレプチンの血中濃度を変えるかどうかについても検討した.実験結果は4週間のRTが体重と内臓脂肪重量の増加を抑制する効果があることを示した.さらに,RTは血清トリグリセリド濃度の有意な低下をもたらしたが,骨格筋中よび肝臓中のトリグリセリド濃度には影響を及ぼさなかった.また,統計的に有意でなかったが,RTはレプチンの血中濃度を低下させる傾向があった.
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