研究概要 |
本研究の目的は,高齢者の転倒に関わる転倒セルフエフィカシー尺度を開発することであった.研究1では,老人介護施設に居住する24名の高齢者を対象に面接調査を行った.その内容は,彼らの日常生活の活動中に起こる身体の不安定感および転倒しそうになる状況および事象であり,それらの回答内容を基に27項目からなる尺度を作成した.研究2では,これら27項目から成る尺度を地域および高齢者施設に居住する151名の高齢者を対象に行わせ,各項目について分布を検討した.その結果,妥当と思われる15項目からなる転倒セルフエフィカシー尺度を完成させた.研究3では,内部一貫性(α=.96)および検査・再検査法(r=.74)による検討を行った結果,高い信頼性が確認された.研究4では,この尺度の妥当性の確認のために,高齢者に、10m歩行および30cmの障害物またぎ越し動作を行わせ,その際の各指標と転倒セルフエフィカシー尺度の点数との関係を見た.その結果,転倒セルフエフィカシー尺度得点と重心動揺計の静的バランスの間に関係はなかったが,歩行においてはストライド幅および歩行速度との間に,さらにまたぎ越し動作では3つのストライド距離変数との間に有意な相関係数が得られた.また,過去一年間に転倒を経験しなかった者は,経験した者と比べて,有意に大きな転倒セルフエフイカシー尺度得点を示した.加えて,転倒恐怖が少ない者は,大きな者と比べて,有意に大きな転倒セルフエフイカシー尺度得点を示した.将来の研究として,この尺度は,転倒しやすい高齢者をスクリーニングしたり,転倒予防プログラムの効果の評価として使用されるべきである.
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