研究概要 |
本研究の目的は,近代以降における都市の発展過程を明らかにするさいに,交通基盤の建設や整備が果たした役割の重要性に着目し,交通発展と都市構造の形成の相互関係を明らかにする点にある。2年間にわたる研究の結果,名古屋市とその周辺地域において,鉄道敷設,港湾建設,道路建設など進められた結果,都市や地域の空間構造が段階的に変化していったことが明らかにされた。具体的には,東海道線をはじめとする幹線鉄道,これと連絡する私設鉄道が貨客輸送の面で重要な役割を担った。鉄道ルートの決定はその後の都市発展を左右するに十分であり,とくに名古屋駅の開設位置が市街地構造の形成に及ぼした影響は顕著である。鉄道交通とならんで特記されるのが港湾の建設・整備である。とりわけこの地域にとって重要なのは名古屋港の開港である。後背地域の経済発展に後押しされるかたちで開港したが,その後は港湾が産業発展の必須条件となり,両者は一体的に発展していった。さらに陸上部での道路建設は,名古屋市とその周辺地域を結ぶ役割を近世とは比べようもないレベルで果たすようになった。基本的には近世までの交通ルートを踏襲したといえるが,個々の道路が都市間の連絡や地域発展しに対して果たした役割は多様である。いずれにしても,近代都市・地域の空間的発展を考えるさいに交通が果たした役割の重要性は十分に検証されたといえる。
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