研究概要 |
屋久島の気候環境とその原因を3次元的に明らかにするため,総合的な気象観測を山岳部で行い,収集したデータを中心に解析を行った.特に鹿児島の高層観測データと屋久島の観測データの比較から,自由大気の鉛直構造と屋久島における温湿度の標高による変化を,気圧配置および自由大気の成層状態を中心に解析を行った。 その結果,気圧配置やそれにともなう自由大気の成層状態の違いによって気温および湿度の標高による変化に違いが認められた。特に,標高1800mの山頂部に位置し,森林限界より上にある黒味岳と標高1360mの森林地域に位置する淀川との間では,気温の顕著な逆転がしばしば起こるとともに,山頂部に向かって相対湿度の急激な低下が認められた。このような現像は,移動性高気圧に覆われ,1000-1500mの高度帯に逆転層が発達する場合に出現頻度が高かった.また,自由大気の鉛直構造との比較から,山頂部では同高度の自由大気の気温や湿度との対応がよかったのに対し,その下の森林帯では,自由大気の気温や湿度の変化と異なった変化をしていた.このことから,自由大気の温湿度状態の変化に対し,樹林帯では,森林そのものが温湿度の変化を防ぐ役割をはたしているのに対し,樹林帯から抜ける山頂付近では,自由大気の変化と対応した気温や湿度の変化が起こっていることが明らかになった。 以上の結果により,屋久島の高標高域の温湿度環境は低地部とは大きく異なることが明らかになり,その変化は,被覆している植生の状態と自由大気の成層状態との関連によって生み出されていることが明らかになった。
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