研究概要 |
衣服の感性品質のうち,フィット感を取りあげ,その評定の個人差を分析した.衣服のフィット感には,着用状態での衣服のゆとり量,つまり,衣服の仕上げ寸法と着用者の身体寸法の差が大きく影響する.本研究では,1)既製服の仕上げ寸法の実態,2)いくつかの上衣を対象にフィットすると判定されるサイズのバスト部のゆとり量の算出,3)デザインによる上衣のバスト部の仕上げ寸法の見え方の違いを測定することによってフィット感の個人差を検討した.まず,市販されている既製服のバスト部の仕上げ寸法の実態をフィット性を必要とするサイズ表示9ARおよびフィット性を必要としないサイズ表示Mの衣服それぞれ3種について調査した.その結果,特に,後者に該当する衣服については,バスト部の仕上げ寸法がメーカーによって大きく異なっていた.次に,デザインが同じでサイズのみ異なる衣服を女子学生に試着してもらい,フィットすると判定されたサイズの衣服のバスト部のゆとり量をいくつかの服種別に測定した.その結果,フィット性を必要とするブラウス,プルオーバーの平均値はそれぞれ7.3cm,2.4cm,フィット性を必要としないセーター,トレーナー,ポロシャツの平均値はそれぞれ-11.9cm,32.0cm,8.9cmであった.これらの衣服についてのゆとり量を個人別に分析したところ,ゆとり量の比較的大きなサイズを選定する者と,逆に小さなサイズを選定する者があることがわかった. 以上に述べたように,既製服の仕上げ寸法には,かなり大きなバリエーションがあり,また,着用者によってフィットすると判定されるゆとり量が異なっている.しかし,消費者のなかには,メーカーによって仕上げ寸法が異なるというごく当たり前のことに不満を持っている者が相当数あることがわかっている.これらの実態から,既製服のサイズ選定に関する消費者教育の必要性を痛感し,その教材作成への取組を計画している.
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