研究概要 |
廃羊毛の機能性材料としての再資源化を最終目的として,羊毛のサクシニル化による吸水性の付与を検討してきた。本研究では,まず,羊毛繊維を還元的に可溶化したケラテインを用いて均一系でサクシニル化することにより,従来の不均一系での場合より高い付加率(29.6%)のサクシニル化ケラテインを得ることに成功した。このサクシニル化ケラテインを,エチレングリコールジグリシジルエーテル,ソルビトールポリグリシジルエーテル,ジグリセロールポリグリシジルエーテルおよびNKキャタリストAの4種の多官能性エポキシド化合物を用いて架橋化し再び不溶化するための最適条件を検討した。この結果,得られたものの中では,エチレングリコールジグリシジルエーテルで不溶化したサクシニル化ケラテインが最高の吸水性(25g/g)を示した。 他方,部分加水分解あるいは還元を施した羊毛繊維を不均一系でサクシニル化した羊毛繊維の吸水量はそれぞれ20g/g,39g/gであり,先の方法より簡便な工程で高い吸水性の羊毛誘導体を得ることができた。部分加水分解/サクシニル化羊毛および還元/サクシニル化羊毛の吸湿性は特に約70%R.H.以上の高湿度条件下で高く,繊維中に含まれる不凍水量も未処理羊毛に比べて著しく多かった。結晶化度は前処理よりもむしろサクシニル化後に大きく減少し,サクシニル化が結晶領域に及んでいることが明らかとなった。得られたサクシニル化羊毛誘導体の吸水性,吸湿性および不凍水量はサクシニル化度に対応して増加しており,それらはサクシニル化によるカルボキシル基の増加に強く影響を受けていることが示唆された。
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