研究概要 |
乳幼児に発症頻度が高く成長してもアレルギー症状が解消されにくい鶏卵アレルギーの原因物質オボアルブミン^<1)>とオボムコイド^<2)>(hen egg ovalbumin・ovomucoid : H-OVA・H-OM)は日本ウズラ卵オボアルブミン^<3)>とオボムコイド^<4)>(Japanese quail egg ovalbumin ovomucid : JQ-OVA・JQ-OM)の一次構造においてそれぞれ88.3%、75.8%の相同性がある。しかしInhibiti ELISA法で測定した抗原性はJQ-OVAがH-OVAの6.8%、JQ-OMがH-OMの0.04%であった。これは、わずかのアミノ酸残基が置換しても抗体との結合が著しく低下することを意味する。そこで本研究では鶏卵とウズラ卵のアレルゲン構造の相違を明らかにすることを目的とした。まずJQ-OVAを硫安分画およびゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、ウサギに免疫して抗体を作成した。JQ-OVAをS. aureus V8プロテアーゼ、TPCK-トリプシン、TLCK-キモトリプシンおよびペプシンで消化、消化物をトリシンSDS電気泳動および二次元電気泳動で分離、イムノブロット法で抗JQ-OVA・ウサギ血清IgG抗体と結合するペプチドを検出した。分子量2.5〜10kDaの抗原性を示すペプチドをプロティンシークエンサーでN末端アミノ酸配列分析し、電気泳動で求めた分子量と各タンパク質分解酵素の基質特異性を考慮して一次構造を推定したところ、JQ-OVAの抗原決定基(エピトープ)は17-28、72-84、120-124、132-149、160-175、206-211、219-226、233-242、244-253、298-308に存在することが示唆された。これらの部位はすでに報告されているH-OVAのエピトープ部位とは異なる部位であった。また、鶏卵とウズラ卵で離乳食(茶わん蒸し、カスタードプディング、卵ボーロ、かき玉汁)を作成し2点嗜好試験法で官能検査を行ったところ香り、味、口触り、総合評価の項目において有意差が認められなかった。以上の結果から、鶏卵アレルギー患者の代替食品としてウズラ卵の利用は十分可能であると考えられた。 1)Nisbet, et al. 1981 Eur. J. Biochem., 115, 335-345, 2)Kato, et al. 1987 Biochemistry. 26, 193-201 3)Mucha, et al. 1990 Nucleic Acids Res., 18, 5553, 4)Papamakos, et al. 1982 J. MI. Biol., 158, 515-537
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