研究概要 |
エスカルゴはフランス料理の伝統的食品である。エスカルゴの成分は、タンパク質とカルシウムが多く、脂質が少ない。そこで、この陸貝を将来の食料、宇宙開発のセルにおける食料にする可能性を探って、調理中におこる物性の変化、成分の変化を研究した。試料は、養殖した食用カタツムリであるエスカルゴ(escargo, Helix pomatia)の水煮、冷凍品を用いた。エスカルゴの調理では、前処理として3〜5時間茹でる操作が行われている。そこで、冷凍エスカルゴを解凍後、水、0.25、0.5,0.75,1%の食塩水、20,50%の清酒溶液、のなかで、常圧で1,3,5時間加熱、圧力鍋を用いた加圧加熱で10,20,30分間加熱した。これらのエスカルゴ足肉の硬さをレオメーター(山電、RE3305)で破断強度解析で測定し、液中に溶出するタンパク質とカルシウムの測定を行った。また、タンパク質の中のコラーゲンの測定を行った。さらに、これらの加熱したエスカルゴを10分間醤油で味を付け、官能検査を行ったた。 官能検査で、常圧加熱、加圧加熱ともに長時間加熱した方が肉が軟らかくなった。常圧加熱では5-7時間、加圧加熱では30分間である。臭い、味、ぬめりなどには差がみられなかった。レオメーターで破断強度解析を行うと、最大荷重値は加熱時間が長くなるにつれて低下していることが示され、破断エネルギーも同様の結果であった。常圧加熱で5時間、加圧加熱で30分間行うともとの値の約半分になった。食塩の濃度の影響、酒の影響はほとんどみられなかった。加熱中に茹で水に溶出するタンパク質は次第に多くなり、常圧5時間で全タンパク質中の15%になり、このうち約70%がコラーゲンであった。溶出するカルシウムは10%以下であった。肉の組織構造の観察では、筋繊維が加熱時間とともに粗くなり、この変化が硬さの低下に寄与していると考えられた。
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