研究概要 |
伝導型微少熱量計(Sweden Thermometric社製Thermal Activity Monitor 2277(TAM2277))を用いる精密測定によって、米飯の老化熱を10℃において見いだした。クリープメータ(山電製RE-3305)によるテクスチャー測定によっても、かたさ、付着性、凝集性の経時変化において、老化熱の時間依存性に対応する結果を得た。米(宮城県産ひとめぼれ、新潟県産コシヒカリ)は自家精米し、通常の方法(浸水時間30分 蒸らし時間15分)で炊きあげ、これを標準炊飯米とした。米飯用乳化油脂(デリカライトおよびライスグッド)やショ糖脂肪酸エステルを添加して炊飯した場合の老化防止効果、蒸らし時間が5分の米飯の老化についても検討を行った。 熱測定:測定開始直後から発熱が観測され、16-29時間後に発熱のピークを迎えた。出力は減少しながらも1週間以上持続し、その後殆ど0に至った。以下にピークに至るまでの時間、米飯1g当たりの老化熱を示す。上記の添加物(添加量は生米に対する重量)が老化の進行を遅らせ、その程度を(熱として20-30%程度)低下させていることが判明した。蒸らし5分の米飯の老化熱が小さいのは、糊化が十分でなかったからであると考えられる。食味上位米であるコシヒカリの老化熱は、米飯用乳化油脂等を添加したひとめぼれよりも小さく、これはアミロペクチンの含量に起因するものと思われる。 『ひとめぼれ』標準炊飯米(18h,2.2J)、デリカライト1%添加(23h,1.8J)、ライスグッド2%添加(24h,1.7J)、ショ糖脂肪酸エステル0.5%添加(19h,1.6J)、蒸らし5分(16h,1.8J) 『コシヒカリ』標準炊飯米(29h,1.4J)、ショ糖脂肪酸エステル0.5%添加(再現性を確認中、1-1.2J) テクスチャー測定:老化の進行はかたさの増加、付着性および凝集性の低下、脆さの出現率の増加として現れた。上記の添加物は、保存時のかたさの増加を抑え、老化抑制に有効であった。コシヒカリのかたさ(圧縮率80%)はひとめぼれのそれと殆ど変わらないが、初日の付着性,凝集性が大きく,保存3日目以降ではかたさ(圧縮率25%)が小さく,付着性(圧縮率25%)が大きいという特徴を示した。 一方、25℃においては発熱が観測されず、実験終了後の米飯の食味がさほど低下していないことやテクスチャー測定の結果を考えあわせると、測定系(密閉系)では老化が認められないと判断された。 今後さらに、1.品種が異なる米飯、2.炊飯条件が異なる米飯、3.甘味が少なく老化防止効果があるとされる糖類の添加効果、を明らかにする予定である。
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