研究概要 |
錆化した含塩鉄圧縮成型品を用い、脱塩処理に及ぼす含フッ素オリゴマーの添加効果を調べた。その結果、含フッ素オリゴマーを添加したKOH水溶液は、従来用いられているセスキカーボネイト溶液以上の脱塩効果を示すこと,およびベタイン型オリゴマーが脱塩処理に適した特性を有していることを見い出した。さらに,ベタイン型の中のどのタイプが脱塩処理に適しているかを実験的に調べた。 脱塩量に関しては,親水基のみを持ち,かつ,長い鎖長の含フッ素末端基を有するオリゴマー(SK-6)が優れており,セスキカーボネイト溶液よりも脱塩量は約3.7培であった。また,脱塩処理後の再錆化に関しては,親水基と疎水基を有するオリゴマー(SK-15)で処理した試料の再錆化量が最も少なかった。以上の結果から,SK-6で脱塩処理を行なった後にSK-15で防錆処理を行えば,良好な保存処理が期待できることが分かった。 次に,含フッ素オリゴマーの長期保存に及ぼす影響を5種類の処理液について調べた。処理液で脱塩した試料を室内に1年2ヶ月〜1年6ヶ月間保存した後に水蒸気で飽和された空気中に懸垂し,その重量変化を測定した。その結果,KOH水溶液の場合の乾燥重量増加を基準にして各試料の乾燥重量増加を表すと,5.9培(セスキ),2.5培(SK-15),2.2培(SK-2),1.3培(SK-6)となった。脱塩量の結果と照合すると,再錆化は脱塩量が多いほど少なくなっている。そのため,脱塩量が少ないセスキカーボネイト水溶液の場合には,再錆化量が極端に大きくなり,逆に,脱塩量が多いSK-6の場合に再錆化量は最小になった。 以上の実験結果から次の結論を得た:脱塩処理後の短い期間ではオリゴマーに含まれる官能基の疎水性,親水性が再錆化の程度を決めるが,長期保存中の再錆化は残存塩量によって決まる。従って,長期保存を考えると,脱塩量の最も大きなSK-6が添加オリゴマーとして最も適していると考えられる。
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