研究概要 |
本研究を通じて,身近な植物に含まれる天然物色素を用いた化学実験教材の開発に関して以下のことが明らかになった。 (1)スオウ幹部からのブラジリンの抽出,藍の葉部からのインジゴの抽出,アロエからのアロエエモジンの抽出,およびタマネギ外皮からのクェルセチンの抽出は,比較的簡単な方法で短時間に行うことができる。これらの操作は,内容的にも所要時間の観点からも高等学校の「化学」において生徒実験として取り入れることができる。 (2)抽出したブラジリン,アロエエモジンおよびクェルセチンの溶液は,各種金属イオンを含む水溶液と反応して鮮やかな呈色を示す。これらの反応を用いると,検液に含まれる金属イオンを定性的に判別することが可能であり,中学校「理科」や高等学校「化学」の関連する単元で効果的に利用することができる。 (3)抽出した天然物色素を用いて簡単に試験紙を作成することができる。これらの試験紙は,金属イオンの定性的判別や半定量的分析に簡易法として用いることができ,環境学習などにおける水質調査活動への活用が期待される。 (4)天然物色素は,金属イオンとの錯形成反応,溶液の酸性度の変化に伴う酸解離反応,酸化還元反応により顕著な呈色の変化を示し,これらの化学反応について導入実験の素材として有効であると考えられる。 (5)身近な植物に含まれる天然物色素を用いた化学実験は,鮮やかな呈色の変化を示し,生徒の化学反応に対する興味関心を喚起する。また,天然物色素を化学合成する実験と組み合わせることにより,化学の学問的歴史や意義について考察させることも可能である。
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