研究概要 |
本研究は,これまでに収集・蓄積してきた授業の映像記録の内容や録画方法を検討し,その映像を録画したベテラン教師が捉えた各ショットの撮影意図を推測するという手法により,一人の授業観察者としての「授業を捉える視点」を明らかにしようというものである。そのために,教職経験の異なる教師が同一授業をビデオカメラにより録画した。これらの複数の授業記録をもとに,録画によりファインダーを通して捉えたショット中に含まれている情報(例えば,発言者と他者,特徴的な子どもを捉えているなど)を検討し,ベテラン教師の「授業を捉える視点」を抽出し,その授業観と教育技術を明らかにしようとするものである。以下のような経過で研究を進めた。 1.フレーム検討視点群の設定:撮影者が授業の各シーンを,フレーム内に何をどのように捉えているかを検討する「フレーム検討視点群」を再検討した。とりわけ,撮影者の意図を推測する視点をベテラン教師という枠組みで行った。その結果,パンニングを開始するタイミングの微妙なズレに着目した。 2.授業記録の分析:ベテランの授業実践者が撮影した過去の授業映像記録を収集した。また,初任者からベテランまでの教職経験の異なる教師が同一授業を録画した。これらの授業記録をもとに,言語記録を作成するとともに,上記フレーム検討視点群を適用した教職経験年数の異なる教師間の視点の異同を分析した。パンニングを開始するタイミングとフレームサイズに焦点をあてることが有効であることが見いだせた。 3.授業映像記録のデジタル化:アナログであるビデオテープの記録をデジタル化して,2の作業に適した分析方法を検討した。また,微妙なタイミングのズレを検出するために,4分割による画面表示を可能にした。このシステムは,ズレに着目することにより,教師教育教材として発展させることが有効であるとの知見も見いだせた。
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