研究概要 |
認知科学における状況的認知論の知見をもとにして子どものポートフォリオ学習を検討し,Webにこの教育的機能を付加してコミュニケーションと知識の共有化が可能な遠隔共同ポートフォリオ学習環境システムのあり方を示し,このシステムを活用した授業の構想・計画と実践方法を明らかにした。これに基づき,学習成果,ポートフォリオ,コミュニケーションの3種類の情報を蓄積するWeb-DBシステムを開発した。また,複数の学校のWebサーバが,生徒からは統合された1つのサーバシステムとして情報検索やコミュニケーションできる統合機構を開発した。 このシステムを学校で授業に用い、実践結果を分析して,次の成果を得た。 1 長期的な学習中,標準基準に沿う振り返りを児童生徒が行いやすいように,システムのインタフェースを再構成した。また,ネットワーク上のコミュニケーションを促す「出だし言葉,つなぎ言葉」を調整し,実践対象の児童生徒(小学校高学年,中学生)用それぞれの学習環境を構成した。 2 小学校では,総合的な学習の時間を想定した福祉の授業(30時間)を設計し実践した。中学校では生徒同士及び教師との相互作用を引き出すことに,より焦点をあてた授業(32時間)を設計し,理科の時間で実践した。 3 小学校の実践では,ポートフォリオを何度も改善することにより学習効果が挙がったこと,情報の読みとりを深めるには「しおり機能」や「評価基準参照機能」が有効であったこと、他者評価を得るため電子掲示板が有効であったこと,話し合いを対面から徐々にネットワーク上に移行すると無理なくできたこと,追求の進め方の助言に「出だし言葉,つなぎ言葉」が有用であった。また中学校の実践からは中学生がネットワーク上の話し合い(相互作用)の価値を「異なった意見を出し合うことに意味がある」ことに見いだしていったことが示された。
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