研究概要 |
本研究の目的は,ビデオ撮影型の遠隔講義を実現するために,黒板を使った一般の講義を自動撮影する手法を構築することにある.この目的を達成するために,以下の点を明らかにした. ●黒板講義を行う教師が説明する対象を最新の板書領域であると仮定し,それを中心に撮影する手法を構築した. ビデオ撮影型の遠隔講義のための講義撮影においては,教師が説明している対象が何かを把握し,それを中心に撮影するカメラワークを採ることが必要である.板書は説明するために書くのであるから,教師は最後に書かいた板書を説明していることが多いと考えられる.本研究では,黒板全体を写した映像から最新の板書領域とそれをズームインして写すタイミングとを抽出し,効率良く撮影するシステムの構築を行った. ●構築した自動撮影システムを実際の講義に適用して評価した. 九州大学で実際に行われている講義を本システムで撮影し,その映像を学生に見せることで,本システムの評価を行った.その結果,ほぼ全ての板書の内容が学生に伝わっていることが確認できた.さらに,アンケートの結果から固定カメラで撮影した映像と比べて有意水準1%で優れた映像を撮影できていることを確認することができた. ●遠隔教室で参加する学生が見たい場所を見ることができるような仕組みを検討した. 上のアンケートの際に,「自分の見たいところがよく見えたか?」という問に対する評価値は低いものになっている.これは,学生が見たい所は時により人により異なるので,必ずしも説明対象ばかりを見ているとは限らないからである.また,本システムの推定誤りで,最新の板書ではない場所を写していた場合もあった.これに対して,講義中の黒板の映像を静止画で自動的に保存し,Webブラウザで自由に閲覧できる環境を整えることで,学生が見たい所を参照できることを示せることを確認した.
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