研究概要 |
2000年度に実施された大学入試センター試験英語の試験問題について,Graded Response Model(Samejima,1969,1972)に基づくテストレットモデルによる分析と,2パラメタロジスティックモデル(2PL)による分析をこころみた。 利用したデータは,この年の大学入試センター試験の受験者のうち,いわゆる5教科型の受験者(国語I・II,理科のB科目,地歴のB科目または公民,数学IA,数学IIBを受験した者)249,256人の解答である。テストレットオペレーティング特性曲線,テストレット特性曲線,テスト特性曲線や独立項目として扱った23の項目の項目パラメタ等をみると2つのモデルの間の一致はかなり高く,また,2つのモデルに基づく能力推定値の間の相関も0.987であった。しかし,テストレット情報関数の違いは大きく2PLの情報量がテストレットモデルの情報量を概ね上回る結果となった。また,能力推定の標準誤差の平均は2PLがテストレットモデルを下回る結果となった。 このことによって,テストレットモデルを適用することの妥当性が示されたので,引き続きテストレットモデルに基づく適応型のCBT(Computer Based Testing)システムを構築し,その性能を2つの方法で評価した。第1は実受験者の解答パタンに基づくもの,第2は正規乱数によって発生した受験者の能力値に基づくものである。第1,第2の方法を通じて真の能力値と推定された能力値の間に高い相関が見られたので,システムはほぼ期待通りに働くことが確認された。
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