研究概要 |
情報処理特性の評価は,主として、WISCやK-ABCなどの心理検査によって行われてきた。これらの検査では、課題を遂行していくプロセスに関する検討は困難である。この点で、課題の遂行プロセスに関して評価を行う評価システムの開発が必要である。また検査課題が脳機能のどのような側面を反映しているのか,生理心理的指標による検討が必要である。一方、情報処理特性に基づく支援方法の開発にあたっては,多くの学習障害児が困難を示す学習課題に対して,個別の援助条件を整備することが重要である。 以上より,本研究では,以下の検討を行なった。 (1)注意・記憶機能と実行機能を評価する測定システムを作成し,健常小児に適応してその標準値を収集する。それにより、学習障害児の認知特性のアセスメントを可能にする評価システムを開発した。 (2)学習課題に関しては,学習障害児が多くの困難を示す漢字学習について,その困難の様相を明らかに士,かららの認知処理特性との関連で検討を行なった。これに基づき,学習支援課題をコンピュータにより作成し、学習障害児に適応して,その有効性を検討した。 (3)記憶機能と実行機能の評価方法として近赤外光による脳血流動態の測定方法の有効性を検討した。具体的には,実行機能及び言語課題を遂行している際の脳血流量の変動を、成人を対象として測定し,K-ABCの実行機能課題において,前頭前野の血流増加を観察した。 これらの検討をとおして、教育現場で利用可能な実行・記憶機能の評価システムを開発した。また学習支援に関しては,小学校の漢字を対象とし、子どもの認知特性を考慮できる学習支援ソフトを開発した。さらにK-ABCの検査課題と脳機能との関連を評価することができた。これに基づき,子どもが学習課題を行っているときの生理的指標の評価に基づき,最適な学習環境を構成することが可能であることが示された。
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