研究概要 |
栽培実習教育において,灌水は基本的学習項目の一つであり,灌水方法を学生に正しく理解できるように指導することは極めて重要である.そこで,灌水に付随しておこる現象を科学的観点から把握し,最適な灌水の方法について学習できる実習用教材の開発を試みた.5種類の作物について土壌水分の異なる区を設けて栽培し,灌水と土壌水分,気温,地温,日射量などの栽培環境,生育,収量および品質について検討した.土壌水分はテンシオメータによる土壌水分張力およびTDRあるいは静電容量による土壌の体積含水率を計測した.テンシオメータは水の補給が必要であるのに対し,TDRや静電容量による土壌水分の計測は取り扱いが容易で応答性も良く正確であった作物の播種にともなう灌水の教材としてトウモロコシ,ダイコンおよびホウレンソウを異なる灌水頻度で栽培した.灌水頻度が少なくなると土壌水分が低くなり,全ての作物で出芽の遅れが生じ,生育が劣った.生育への悪影響はホウレンソウよりトウモロコシおよびダイコンで大であった.また,異なる灌水頻度と畝の性状でサツマイモを栽培した生育初期には灌水を多くして土壌水分を高く維持し,中期以降は灌水を控えることで塊根収量が増えることが分かった.土壌水分は高畝より低畝で高く,畝の形が同じであれば,マルチの有無による差が認められなかった.収量は高畝でマルチをした区で最大になった.さらに,灌水の一つの方法として畝間を異なる時期に湛水し,高畝と低畝でタマネギを栽培した.土壌水分は,高畝より低畝で高くなった.収量は高畝にし,鱗茎肥大期以前に湛水することで多くなったが,湛水が長期にわたると根城の環境が悪化し,少なくなった.また,適切な湛水時期を逃すと収量は少なくなった.以上より,灌水方法だけでなく畝の性状などによっても土壌水分が異なり,栽培作物の生育,収量!および品質に影響を及ぼすことが示せ,灌水について理解を深めるための実習教材として活用できることが分かった.
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