研究概要 |
日本の英語教育の環境に適した言語学習ストラテジーの効果的指導モデル構築を最終目標とする本研究は、これまでの研究により以下の知見が得られた。 (1)暗示的言語学習方略の指導効果は限定的であり、効果的指導のためには学習方略を具体的タスクと結びつけて明示的に行なう必要性がある。 (2)学習方略の使用認識、動機づけ、言語習熟度は密接に関係しているが、三者の関係は、動機づけが言語学習方略の使用を促がし、それが習熟度の向上につながるという単線的なものではなく、動機づけの種類や学習方略の種類により変化する複雑なものである。 (3)日本では、学習者や教師の言語学習方略に対する理解が今だに乏しい(多くの学習者は、学習方略であることを意識せずに様々な学習方略を使用し、教師もまた学習方略という概念を知らぬまま「読解のコツ」や「新出単語を覚えるコツ」として様々な方略を指導している)。 (4)教科指導の中で自律的学習者の育成を可能とする言語学習方略の指導モデルを構築することは、「総合的な学習の時間」の導入に象徴される問題解決型能力の育成や自律的学習者の育成という社会的要請に適うものである。 これらの研究成果に基づき、今後は以下の目的を中心に言語学習ストラテジーに関する研究を継続していく予定である。 (1)言語学習方略研究の先進国である米国で、これまで提案された有力な学習方略指導モデル(1.A.ChamotによるCALLA、2.A.CohenによるSBI,3.R.Oxfordによるタペストリーアプローチ)を日本の英語教育への応用可能性という観点から比較・検証する。 (2)コミュニカティブなタスクの遂行をとおして言語構造の習得をはかるProcedural Syllabusの考え方に言語学習方略の明示的指導を取り入れた指導法(Task-based Strategy Instruction)を開発する。
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