研究概要 |
観察研究における因果関連指標としてオッズ比が広く用いられているが,交絡の問題が重要な課題になっている.交絡候補因子をコントロールするために,その交絡候補因子で層別を行う層別解析が一般的である.オッズ比については層別オッズ比と素オッズ比が,交絡が存在しない場合でも異なる非合併性を持つことが知られている.本研究では,このメカニズムに対し確率等高線法を用いることで,幾何学的,解析的に明らかにすることが出来た.さらに一般に交絡が存在するときに,共通オッズ比と素オッズ比の差をオッズ比の非合併性と交絡による寄与に分離出来た.上の議論を層別水準が2以上の2x2xk分割表における場合に拡張することが可能であることを示した.またオッズ比の合併可能性の十分条件は条件付き独立性として,知られるが,この場合の確率等高線法での意味づけを行い,この十分条件は等高線図上では一点への集中を意味することを示せた.また観察研究におる因果推論では,上の分割表解析の背景として因果構造が暗黙の内に仮定されている.この因果構造を表すには因果グラフが有効である.この因果グラフの基で,因果リスクが推定可能になる十分条件にバックドア/フロントドア基準が知られているが,その基準の補正を試みた.さらに,これら観察研究における因果推論を事例研究として,産業衛生の分野,精神衛生の分野,医療経済の分野,そして疫学方法論の分野で行い,観察研究における因果推論を事例を等して検討を加えた.
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