研究概要 |
本研究で取り扱うデータは昨年同様,国土交通省(旧建設省)国土地理院によって敷設された日本国内約1,000地点の,1996年から1998年にかけてのほぼ2年もの間計測された各々の地点の位置である.そのうち比較的データの質がそろっている615地点で観測されたものを解析に利用した. ベイズアプローチによる自動平滑化を利用した,大量時空間データの平均的構造の抽出法と,その構造の数理的モデル化を昨年に引き続き行った.具体的には,ベイズアプローチによるノンパラメトリック平滑化と,残差解析を,時間方向・空間方向に交互に適応し,時間のみに依存した成分(実際には,長期的な季節変動成分に対応する)と,空間成分(短期的な,ローカルな気象条件とその移動がもたらすものに対応)およびそれ以外の成分に,まず逐次的分解するような手法を開発した.示された手法はさまざまな時空間データに適用可能であり,超大規模時空間データセット中の平均的構造への探索的モデル化を可能にできると思われる.つまり平均的構造の時空間依存性を表現する統計モデルの半自動的な発見を支援することが期待される. 時間方向の解析と,空間方向の解析を交互に繰り返しながら,各ステップにおいて残差解析を綿密に行うことで相補的に情報を次のステップに組み込めるような,つまり最終的に同時推定することと等価な推定方法になる手法の可能性を探った.如何なる残差解析が適当であるか,それをどのような形で異空間へ持ち込むのが適当なのかを,計算速度のパーフォーマンスの観点を重視しながら研究した.この方向である程度のめどがついたので,少数事例ではあるが最近の集中豪雨の日の気象図をデジタル化し,時空間統計モデルを利用したGPSデータの解析との比較を行った.気象図のデジタル化,及び気象情報と等価的な他のデジタル情報の作成を独自に行おうとしたため十分な解析が行えなかったのが反省点である.研究の途中で,複数のトレンドモデルからの選択に関して有益な結果が得られたので、アメリカ地球物理連合学会にて発表を行なった.
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