研究概要 |
本年度は3次元モデルの形状を対象とした電子透かしと形状類似検索に絞って研究を行った. 1.電子透かし:我々は昨年度,3次元ポリゴンメッシュの形状をスペクトル分解した領域で透かしを埋め込む,全く新しい電子透かし手法を提案した.(2001年5月に情報処理学会論文誌,同6月にGraphics Interface 2001で発表.)本手法は乱数値の重畳や形状のスムージングなどに耐性を持ち,かっ同程度の耐性を持っ他手法に比べメッシュ頂点あたりの埋め込み情報量が多い.しかし,頂点接続性を変える妨害(例えばポリゴン簡単化)に弱く,スペクトル分解に必要な固有値分解に時間がかかる,という2つの欠点があった.本年度はこれらの欠点を解決する改善手法である(1)効率の良い固有値分解アルゴリズムの採用,(2)パッチ分割とパッチごとの位置合わせ,および(3)リサンプリングによる頂点接続性の復元,の3手法を提案し,その実装と評価を行った(2002年9月にEUROGRAPHICS2002で発表予定.) 別に,昨年度提案したベクトル型電子地図を対象とする電子透かし手法に改良を加え,切り取りに対する耐性を高めた. 2.圧縮:本年度は圧縮についての研究は行わなかった. 3.類似検索:類似検索について形状特徴量とその比較手法について研究を行った.3次元モデルの形状類似検索を行う際の問題点に,(1)位置合わせが必要なこと(モデルの大きさ,向き、位置を合わせないと比較に失敗する),(2)機械的に計算した形状の類似度(相違度)が人間の主観にもとづいたそれと一致しない,の2点がある.我々は,位置合わせが不要で幾何的・位相的ノイズに影響されにくいOsadaらの形状特徴量と学習型類別アルゴリズムであるSupport Vector Machineを組み合わせ,人の主観を反映する形状類似検索手法を提案した.評価の結果この組み合わせの有用なことが示されたが,実用化には更なる改良が必要である.
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