研究概要 |
本課題では,従来,有線通信網上でのみ構築されてきた分散仮想環境(DVE)を無線網上で実現する新たな手法について研究を行った.遠隔地の利用者同士が協同で3次元モデルの創作活動を行う「協創型3次元造形環境」を題材として,転送遅延を持つ無線通信環境でDVEシステムを実現するための要素機能の設計と開発およびこれを用いて応用システムを実現した.これらの研究開発を通じて以下のような成果が得られた. 1.無線通信向け分散仮想環境アーキテクチャ:無線網上でDVE環境を実現するために,各参加システムが自律的に更新情報の送受信や描画速度の調整を行うことが可能な新しい分散仮想環境アーキテクチャを設計した. 2.関数表現に基づく3次元データ共有法:頻繁に更新される3次元データの高速共有を可能にするために,3次元モデルの関数表現法に基づいて,大容量データの漸新(progressive)転送や更新内容の差分値転送等が可能な高速3次元データ共有法を実現した. 3.対話型進化計算による協創型設計システム:DVE環境で協創型設計を支援する3次元造形システムを設計・開発した.特に,製品の意匠設計などを協同で行う場合を想定して,対話型進化計算による新規形状の発想支援を受けながら利用者が頭に描く抽象的なイメージを容易に3次元モデルに目体化する手法を開発し,それに基づくモデリングシステムを実現した. 4.都市計画・評価,土木施工計画・管理,および花火アニメーション制作を題材とする仮想環境応用システムを開発し,上記1,2,3の研究成果の有効性について評価を行った. 以上の成果は,IEEE/ACM主催の国際会議および情報処理学会/電子情報通信学会論文誌等で公表し,その一部については特許化を行った.
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