研究概要 |
実写画像とコンピュータグラフィックス画像を合成して高品質な画像を作成するには,画像の入力側(実写画像を撮影するカメラ)と出力側(合成画像を見る人間の眼)のモデル化とそれらのキャリブレーションに基づく画像合成の技術を確立する必要がある.本研究では,カメラと眼のキャリブレーションに基づく高精度立体視画像合成に関して,以下の成果を得た. 1.統合カメラモデルとキャリブレーション手法の検証 実カメラのズーム,フォーカス,アイリスの特性を忠実にモデル化した統合カメラモデルの妥当性とキャリブレーション手法の精度評価を目的として,多重ズームぼけ画像からの距離計測を行った.従来のフォーカスやアイリスと同様にズームによるぼけ変化から距離計測が可能であることを示し,その結果を利用した画像合成を行った. 2.統合カメラモデルに基づく高精度ぼけ画像生成アルゴリズムの開発 高精度なぼけ画像を生成するアルゴリズムとして多重Zバッファアルゴリズムと多重ピンホールアルゴリズムを実装し,高速化について検討した.その結果,レンズの光学現象を忠実に再現するには多重Zバッファアルゴリムが適しているが,高速化には多重ピンホールアルゴリズムが適していることを示した.また,多重ピンホールアルゴリズムを用いて実写画像と仮想物体のぼけ画像合成を行い,実時間処理の可能性を検討した. 3.カメラと眼のキャリブレーションに基づく高精度立体視画像合成 光学シースルーにおいて,実世界と仮想世界が学的に整合した高精度な立体視画像を生成するための眼のモデル化とキャリブレーション手法について検討した.ヘッドマウントディスプレイを装着した場合に生じる幾何学的不整合を,実・仮想空間座標のパラメータとして表現し,その解消方法を示した.特に,個人ごとに固有のパラメータである視点間距離の計測とその値に基づくアイキャリブレーション手順を構成し,その評価を行った. 4.アイキャリブレーションに基づく立体視画像合成の応用 アイキャリブレーションに基づく高精度立体視画像合成の手法を,双眼蹟微鏡を用いた眼科シミュレータに応用した.顕微鏡の光学系による視線光軸の変化に対応するために視点位置を両眼独立に推定するアイキャリブレーションを適用し,スケールが異なる立体視にも適用可能であることを確認した.
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