研究概要 |
不特定多数のユーザ(人間又はシステム)が使用するサーバのように,その利用形態や環境が動的に変化するソフトウェアをどのように作り上げるかは,興味深い問題である.動的な環境変化が予測できる場合には,それらの条件と対応をプロダクションルールとして記述し,ソフトウェアにあらかじめ組み込んでおくことで対応することができる.一方,Webサーバのようにアクセスパターンが全く予測できないようなソフトウェアでは,システムが動的な環境変化に自律的に適応できれば,システム開発者にとっての利便性が大きいと考えられる. 本研究は,システムが環境変化に動的に適応するために必要な機構を作り上げることを目的とし,そのための基礎技術として細粒度オブジェクト,自己反映計算,メタレベルアーキテクチャを利用した.平成12年度の研究成果として,自律的かつ動的な環境への適応のために,人工免疫ネットワークを利用した方針決定エンジンiNexusを作成し,これを利用したOpenWebServerを実現して,動的に変化するアクセスに対してWebサーバでの処理方式を動的に変更できることを確認した.平成13年度は,人工免疫ネットワークの持つ環境への高い適合性に着目し,通信管理システムにおける制御方針決定に人工免疫ネットワークを用いるシステムを開発し,現実の応用に対しても高い適合性を持つこと確認した. 分散システム全体として環境変化に動的に適合する場合については,平成12年度の結果を利用し,アクセスが集中したサーバのコンテンツの複製を別のサーバに動的に作成して輻輳を回避する機構を実現した.現実のWebサーバに適用する際に問題になる複製の作成コストと通信負荷については,さまざまな状況での実験を行い,この方式の有効性を確認している.
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