研究概要 |
本研究では、人間の言語へと進化する第一歩と考えることのできる動物生態の一部に見られるコミュニケーションシステムから着想を得た,群ロボットを想定したコミュニケーションの創発・進化に関するモデルを構成し,シミュレーションを行い、コミュニケーションシステムに内在する多様性の進化に関する実験を行った.その結果,語彙の自律的な進化によって、適度な大きさの語彙を共有するグループに分かれ、全体としてタスクの実行効率が高められるということが示された.また,その実験を発展させ,コミュニケーション時の誤認の役割に関して,群ロボットに関するタスク設定に基づいてその適応性を示した.次に,それらの実験で得られた知見に基づき,計算機を介さずに実時間で進化する群ロボット実験のためのテストベッドとしての実ロボット進化システム,及び,ユーザの分身として自律ロボットが実空間/仮想空間を移動し,コミュニケーションを行う遠隔ロボットシステムの構築を行い,その実現可能性や有効性を示した.本研究では,さらに,創発型コミュニケーションの一般化として,その創発性の特性や応用可能性を検討するために2つのモデルを構築し,シミュレーション実験を行った.ひとつは,コミュニケーションを一般化したゲーム理論的な状況設定における進化と学習の相互作用の検討を目的とするモデルである.もうひとつは,蟻のフェロモン・コミュニケーションのような,場を介したコミュニケーションにおいて,秩序の創発に対して多様性が持つ役割の検討を目的とするモデルである.以上の実験から得られた知見を踏まえながら,コミュニケーションや相互作用に基づく進化や学習などの適応によって地形が変化するような動的適応度地形の統一的な理解という観点から,コミュニケーションや相互作用における創発性の意義に関して統一的な議論を行った.
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