研究概要 |
SATプランニングは,プランニング(計画作成)問題を充足可能性判定問題(SAT)に変換し,高速SATソルバによりモデルを生成しプランに変換する手法である.本研究では,知識表現の研究分野で開発されてきたアクション言語を入力として,高速なSATプランニングを行うことができる,統合的なアクション言語処理系を構築することを研究の目的とした. 2年の研究期間において,アクション言語による記述をSAT問題に変換するためのアルゴリズムの検討,SATソルバを用いたプランニングエンジンの実現,学習アルゴリズムの理論的検討,および統合的システムの実装を行った.ここで,アクション言語による記述をSAT問題に変換するアルゴリズムの検討においては,非決定性アクションを含むプランニング問題の変換についても考察した.プランニングエンジンの実現においては,プランニンググラフをデータ構造として用いて,前向き/後向き/双方向の3種のグラフ展開アルゴリズムを開発し,効率的な探索によりプラン抽出ができるように工夫した.また,学習アルゴリズムの検討では,アクションの因果関係を学習するアルゴリズムを考案し,これを用いてさらなるプランニングの高速化を目指した.さらに,アクション言語処理システムの実現においては,プランナのベースとなるSATソルバも複数用意することで交換可能な設計とした.また,プラン生成の過程をユーザに知らせるためのプランニング・グラフ描画モジュールを設計・実装し,プログラミング言語には,再利用性・柔軟性に優れたJavaを用いた.このようにして,本研究における成果物として,統合的プランニングシステムAMPを開発整備した.このプランニングシステムの性能を評価するために大規模なプランニング問題に適用し,現実的な問題に対する有用性を検証した. 以上のように,本研究により開発した統合的システムAMPは,状態変化やアクションを表現する研究とプランニング研究の双方にとって,非常に有用なものであるといえる.
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