研究概要 |
画像から対象物体の領域を正確・頑健に抽出することを目的として,領域ベースの動的輪郭モデル(ACM)を領域抽出に用いる手法が提案されている.この手法は,ACM内外の広い領域で画像特徴の分布を求め,これをACMの制御に反映することで領域抽出の精度・頑健性を向上させている.しかし従来提案されている手法では,画像特徴の分布を効率的かつ効果的にACMの制御に反映し領域抽出処理へ導入するという観点からは十分検討が行われておらず,必要以上に処理量が増加したり複雑な輝度パターンを持つ抽出対象には適用できない等の問題が生じていた. 本研究では,この問題に対処するため,ACM周囲の限定された領域に対するクラスタリングと画像特徴の分布に基づくACMの制御とを反復することにより画像特徴の分布を効率的かつ効果的に領域抽出処理へ導入する手法を提案する.提案手法は,画像特徴の分布を求める領域をACMの周囲に限定することで,処理量が必要以上に増加することを防ぎ,さらに,この領域を画像特徴が均一となる部分領域にクラスタリングし,部分領域毎に求めた画像特徴の分布をACMの制御に用いることで領域抽出精度・安定性の向上を図っている.提案手法の有効性は,実画像を用いた領域抽出実験を通して確認された. 対象領域の範囲を限定する領域ベースのACMでは,探索領域の適切な配置(探索領域の長さ・幅,ACM上での配置箇所等のパラメータ決定法)が従来から問題となっていた.本研究で提案した手法は,これらのパラメータのうち,探索領域(提案手法では部分領域)の適切な長さ(ACMに沿った方向での大きさ)とACM上での適切な配置箇所とを自動的に決定でき,ACMの実用性・利便性を高める手法であると考える.しかしながら,探索領域の幅(ACMに直交する方向での大きさ)については,提案手法でも自動的に決定されず,利用者が適切な値を指定する必要がある.探索領域の適切な幅を画像特徴のみから決定することは非常に困難であり,この問題を解決するためには,抽出対象の形状に関する事前知識などを何らかの形で抽出処理に導入する必要があると考えられる.
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