研究概要 |
尺八譜の情報処理システムを構築するためには,尺八譜の表記に用いる「譜字」を計算機可読な形式で表現することが必要である.そこで,平成12年度では,各流派・伝承系譜で用いられている譜字および指遣いに関する幾つかの資料を参照して譜字とその指遣いの関係の調査を行い,尺八譜用の譜字コード:COMSOを考案した.同時に尺八譜情報処理システムの改良に着手し,平成13年度では,1.COMSOコードへの対応:システム内での尺八譜情報の表現方式をCOMSOコードに統一し,プログラムを全面的に改訂した.これにより,譜字の表示,演奏,流派変更等の処理が容易に行えるようになった. 2.琴古流への対応:新たに琴古流尺八譜も処理可能とし,都山流,琴古流および竹保流の3つの流派を扱うことが可能となった. 3.共通音価表現の採用:流派により大きく異なる音価表記方法を,五線譜での表記方法を取り入れた共通音価表現方法を考案し,流派によらず同一の音価表記が可能となった. 4.印刷機能の強化:作成した譜の印刷時に,音価表示の有無,小節線枠の有無を指定できるようにし,使用者のニーズに合わせた柔軟な印刷出力を得ることが可能となった. 5.多様な入力方法:電子ペン等による手書き入力に加え,譜字ボタンでの入力,COMSOコードによる入力等,様々な方法で譜字の入力を可能とした. 以上の成果に基づき,平成14年度では作成した尺八譜情報処理システムのデモンストレーションおよび尺八演奏家や尺八愛好家に試作システムを配布して試用実験を行った.その結果,実際に尺八の演奏をしている人達からは高い評価を得ることができ,一日も早く実用化して欲しいとの要望が数多く寄せられた.その一方で,更なる性能の向上を求める要望も寄せられ,本システムに対する期待が大きいことが分かった.
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