研究概要 |
本年度の研究においては,先見性を考慮した安定性に基づく2つの解である安定集合と調和集合,さらにはあいまいな状況の記述にファジーゲームを用いて,社会的ジレンマにおける主体の行動および企業間の業務提携の可能性,ジレンマ状態にある主体間の提携形成の可能性を分析し,以下の成果を得た. 1 昨年度および一昨年度の研究で明らかになった,安定集合,調和集合と交渉ゲームにおける定常的な均衡点の集合との関連を,展開形ゲームに基づいて定義された安定性の概念を加えて,より詳しく考察するとともに,新たな解の概念を導き,その有効性を検証した。 2 安定集合とシャープレイ値を用いて,ジレンマ状態にある主体間の逐次的提携形成を分析した。特に,1993年の非自民連立政権(細川政権)成立時の各政党の議席数に基づいて考察し,静学的な分析では唯一つ安定であった非自民連立政権が動学的分析において安定なのは,非自民の政党が連立の口火を切ったときであること,また自民党がイニシアティブをとったときには,自民・新党連立政権が安定な連立政権となりえたことを明らかにした。 3 ファジーゲームを用いて,あいまいな状況における先見性を考慮した安定性の概念を考察するとともに,それを用いてジレンマ構造を分析し,ジレンマ状況の回避に関して新たな成果を得た。 昨年7月9日〜12日にイタリアのウルビノで開催された「第12回ゲーム理論とその応用に関するイタリア国際会議」において,上記の2の結果を中心に報告し,この研究の意味,今後の発展の方向などについて,参加者と有益な議論を行った.また,本年2月20日から27日には,イタリアのジェノヴァ大学数学科を訪問し,共同研究者とこれまでの研究のまとめおよびこれからの研究の方向性について打ち合わせを行った。
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